ポルトガル語はブラジルとポルトガルで何が違う?|どちらを学ぶべきか
「ポルトガル語を習いたい」と思って調べ始めると、たいてい最初にこの壁にぶつかります。ブラジルのポルトガル語と、ポルトガルのポルトガル語。どちらを選べばいいのか。
教材の多くはブラジル向けです。けれどポルトガルに行きたくて学ぶ人にとって、それが正解とは限りません。私は大学時代にポルトガルのコインブラへ半年留学し、その後は添乗員としてポルトガルへ30回以上、ブラジル系の方とも現地で言葉を交わしてきました。その経験から、できるだけ正直にお答えします。
結論:入口はどちらでもいい。ただし「行き先」は先に決めたほうがいい
先に結論を書きます。文法の骨格は同じなので、どちらから入っても無駄にはなりません。違いは、日本語で言えば標準語と関西弁ほど…というとやや大きすぎますが、イギリス英語とアメリカ英語よりは差がある、という感覚が近いです。
互いに通じます。ブラジル人とポルトガル人は普通に会話します。ただし最初に耳を慣らす音を決めておかないと、リスニングで苦労します。だから「どちらを選ぶか」ではなく「どちらの音から入るか」を決めるのが実際的です。
まず、音がいちばん違う
文字で見ると似ているのに、聞くとまるで別の言語に聞こえる。これがポルトガル語の最初の驚きです。
ブラジル:母音をはっきり伸ばす
ブラジルのポルトガル語は、母音をしっかり発音します。日本人の耳にはこちらのほうが聞き取りやすいと言われます。特徴的なのは ti / di が「チ」「ジ」に変わること。
| つづり | ブラジル | ポルトガル |
|---|---|---|
| dia(日) | ジーア | ディア |
| noite(夜) | ノイチ | ノイト |
| gente(人々) | ジェンチ | ジェント |
ポルトガル:母音を飲み込む
ポルトガルのポルトガル語は、強く読まない母音がぐっと弱まり、ときに消えます。結果として子音が続けて鳴っているように聞こえ、ロシア語のようだと言われることさえあります。また語末や子音の前の s が「シュ」の音になります。
| つづり | ポルトガル | ブラジル(参考) |
|---|---|---|
| Lisboa(リスボン) | リジュボア | リズボア |
| estás(君は〜だ) | シュターシュ | エスタース |
| telefone(電話) | トゥルフォン | テレフォニ |
※ カタカナはあくまで目安です。ブラジルの中でもリオとサンパウロで s の音が違いますし、ポルトガルも北部と南部で差があります。「地域差がある」という前提だけ持っておいてください。
文法で、はっきり違うのは3つ
1|「〜している」の作り方
代表的な違いです。同じ「私は話している」でも、形が変わります。
| ブラジル | ポルトガル | |
|---|---|---|
| 私は話しています | estou falando | estou a falar |
| 雨が降っています | está chovendo | está a chover |
ブラジルは英語の -ing に近い形、ポルトガルは「〜するところに居る」という形です。覚えること自体は多くありません。
2|「君」の言い方
ブラジルでは você が日常の「君・あなた」です。ポルトガルでは tu を日常的に使い、você はむしろ少し距離のある言い方になります。ここは動詞の活用もセットで変わるので、最初に決めておくと楽です。
3|目的語の位置
「私の名前は〜です」は、ブラジルでは me chamo、ポルトガルでは chamo-me。代名詞が動詞の前に来るか、後ろにハイフンで付くか。書き言葉では差が縮まりますが、話し言葉でははっきり出ます。
単語が違うもの(旅行で効くのはここ)
旅行で実際に困るのは、発音よりもこちらです。駅やレストランで出てくる言葉が、まるごと違います。
| 日本語 | ブラジル | ポルトガル |
|---|---|---|
| 電車 | trem | comboio |
| バス | ônibus | autocarro |
| 携帯電話 | celular | telemóvel |
| 朝食 | café da manhã | pequeno-almoço |
| トイレ | banheiro | casa de banho |
| アイスクリーム | sorvete | gelado |
| 冷蔵庫 | geladeira | frigorífico |
| スーツ | terno | fato |
ポルトガルのカフェで um café と頼むと、小さなエスプレッソが出てきます。リスボンでは uma bica、ポルトでは um cimbalino とも言います。こういう言葉は教科書にはあまり載っていませんが、現地では毎日使います。
では、どちらを選べばいいか
目的から逆算するのがいちばん確実です。
| あなたの目的 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| ポルトガルへ旅行したい | ポルトガル | 現地の音に耳を慣らしておかないと、聞き取りで苦労します |
| ブラジルに興味がある・音楽やサッカーが好き | ブラジル | 教材も音源も圧倒的に多く、独学の材料が揃います |
| 仕事・家族・コミュニティで必要 | 相手に合わせる | 在日ブラジル人の方と話すならブラジル一択です |
| まだ決まっていない。趣味として始めたい | どちらでも | まず発音と挨拶。進む先は途中で決めても間に合います |
迷ったら、最後の行で構いません。はじめの数回でやることは、どちらを選んでもほとんど同じだからです。
なぜ私が、どちらもお教えできるのか
私は大学時代にポルトガルのコインブラへ半年間留学し、現地で言葉を覚えました。つまり私の土台はポルトガルのポルトガル語です。
その後、添乗員として40か国以上を回りました。ポルトガルへは30回以上。ブラジル系の方とお話しする機会も重ねてきました。教科書で両方を比べたのではなく、両方の音を実際に浴びてきたので、「この言い方はポルトガルでは通じるけれどブラジルでは変に聞こえる」といった感覚をお伝えできます。
日本語で説明できることも、独学との大きな違いだと思っています。発音の違いは、理屈を知るだけで驚くほど聞き取れるようになります。
ポルトガル語、はじめてみませんか
初回は60分1,000円。無料のカウンセリングで「何を話せるようになりたいか」を伺ってから始めます。ブラジルのポルトガル語/ポルトガルのポルトガル語、どちらにも対応します。教材はこちらで用意しますので、手ぶらで大丈夫です。
まとめ
ブラジルとポルトガル、どちらから入っても間違いではありません。ただし、耳を慣らす音は早めに決めたほうが近道です。行き先が決まっているなら、その土地の音から。決まっていないなら、好きなほうから。
ポルトガル語は、覚えた分だけその場で使える言葉です。カフェで一言添えるだけで、返ってくる反応が変わります。その感触を、ぜひ味わってみてください。
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添乗員として40か国を回りました。「この国は自分に合うのか」「何日あればどう回れるか」。
ガイドブックに載っているのは"そこに何があるか"ですが、お話しできるのは"そこがどうだったか"です。
関東・関西でのご案内と、オンラインでの旅の相談を承っています。行ったことのない国については、正直にそう申し上げます。

