熊野古道とサンティアゴ巡礼路は姉妹道|両方歩くと「デュアル巡礼者」
スペイン北西部のサンティアゴ・デ・コンポステーラと、紀伊半島の熊野古道。この2つの道は「姉妹道」として提携していて、両方を歩いた人は「デュアル巡礼者(共通巡礼者)」として登録されます。
添乗員として40か国を回ってきましたが、国をまたいでこういう関係を結んでいる道は、ほかに知りません。この秋、私はその両方の土地を訪ねることになったので、制度のことを一度まとめておきます。
1998年、ふたつの道が姉妹になった
どちらも世界遺産です。スペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」が1993年、日本の「紀伊山地の霊場と参詣道」が2004年の登録。
関係が始まったのは1998年の姉妹道提携です。そこから時間をかけて、2014年に和歌山県田辺市とサンティアゴ・デ・コンポステーラ市が観光交流協定を結び、翌2015年2月1日から「共通巡礼手帳」の発行が始まりました。
手帳は両面式になっていて、片面が熊野古道のスタンプ欄、もう片面がサンティアゴ巡礼のスタンプ欄。1冊で2つの道を記録していく作りです。
「デュアル巡礼者」になる条件
意外と知られていないのですが、どちらも「ただ行けばいい」わけではありません。歩く距離とルートが決まっています。
- サンティアゴ側:最後の100km以上を徒歩で。自転車または馬なら200km以上
- 熊野古道側:指定されたコースの中から選んで歩き、最後のスタンプを熊野本宮大社の横にあるスタンプ所で押す
両方を満たすと、記念のスタンプとピンバッジがもらえ、共通巡礼の公式サイトに登録者として掲載されます。
ここで正直に書いておくと、バスで聖地を訪れるだけでは条件を満たしません。100kmというのは、ふつうの脚で4〜5日かかる距離です。思い立ってすぐ、という話ではないのです。
達成者は1万人を超えました
2025年4月25日、登録者がついに1万人に到達しました。1万人目はメキシコから来た46歳の方だったそうです。
この数字の伸び方が面白くて、5,000人に届くまでに8年8か月かかったのに、そこから1万人までは1年半。コロナ後の旅行の戻り方が、そのまま出ています。
登録者は70の国と地域に広がっていて、内訳はこうなっています。
| 国 | 登録者数 |
|---|---|
| 日本 | 1,834人 |
| アメリカ | 1,403人 |
| 台湾 | 1,359人 |
| オーストラリア | 1,232人 |
日本が1位ではありますが、全体の2割に満たない。熊野古道が海外からどう見られているかが、よく分かる数字だと思います。実際、熊野の道で聞こえてくる言葉は、日本語より英語やスペイン語のほうが多い日もあります。
歩く前に知っておきたい、2つの道の違い
同じ「巡礼路」でも、歩く体験はかなり違います。
| サンティアゴ巡礼路 | 熊野古道 | |
|---|---|---|
| 地形 | なだらかな平地と丘が長く続く | 峠の上り下りの繰り返し |
| 道の表面 | 土と舗装路が多い | 石畳と木の根。雨で滑る |
| 泊まるところ | アルベルゲ(巡礼宿)が各所に | 民宿・旅館。数は多くない |
| すれ違う人 | 多い。道連れができる | 区間によってはほぼ無人 |
よく「熊野古道のほうが短いから楽だろう」と言われますが、距離あたりの消耗は熊野のほうが大きいと思っています。平らな道が、ほとんどありません。
それと熊野は雨の多い土地です。杉木立に霧が下りると石畳がよく滑るので、靴だけは良いものを履いてください。ここはサンティアゴとは条件が違います。
この秋、両方へ行きます
10月のなかばにポルトガルと北スペイン、月の終わりに熊野古道と伊勢神宮。姉妹道の両方を1か月のうちに、というのは、なかなかない巡り合わせです。
どちらも添乗の仕事なので、私自身が100kmを歩いてデュアル巡礼者になるわけではありません。それでも、同じ秋に両方の空気を吸えるのは、この仕事をしていてよかったと思えるところです。
歩いてきた感想は、帰ってからあらためて書きます。
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次にどこへ添乗で向かうのかは、ガイドサイトの「次はどこへ」にまとめています。
添乗員として40か国を回りました。「この国は自分に合うのか」「何日あればどう回れるか」。
ガイドブックに載っているのは"そこに何があるか"ですが、お話しできるのは"そこがどうだったか"です。
関東・関西でのご案内と、オンラインでの旅の相談を承っています。行ったことのない国については、正直にそう申し上げます。
